ローゼンメイデン・トロイメント第十話
……え〜。大方の予想通り、雛苺は文字通り機能停止してしまいました。
理屈としては、本来、雛苺は一度真紅とアリスゲームを行い敗れている(前作でのお話)。その時、真紅は、自分の下僕になるならローザミスティカを奪わないと言った為、その条件を呑み、真紅の元で、真紅を通じてジュンの力を借り、今まで過ごしてこられたという経緯があります。
しかし、本来は、アリスゲームの敗者である以上、アリスゲームへの参加資格はない。
蒼星石が破れ、均衡が崩れ、アリスゲームが本格的に始まったことで、そういった云わば反則手は許されない、ということらしい。
前回、アリスゲームに敗れた蒼星石の体から表出したローザミスティカ。蒼星石は、最後に、翠星石に託す旨を述べて意識を失い、それを受けて翠星石は、妹のローザミスティカを回収しようとしますが、寸での所で、水銀燈に奪われてしまう。
「勝ったのは私なんだから」
と、ローザミスティカの正当な所有権を主張し、自らの体に取り込む。
悪役じみた扱いの水銀燈ですが、彼女がローザミスティカの会得に躍起になるのには理由があって、それが「柿崎めぐ」の病気を治す為。
柿崎めぐというのは、眠っていた水銀燈のぜんまいを巻き、眠りから起こした人物なのですが、幼い頃から重い心臓病を患っていて、人生に酷く絶望しており、自ら早期に死が訪れることを願っています。
ローゼンメイデンが、力をフルに発揮するためには、媒介が必要で、その為に人間と契約をする必要があります。その場合、ローゼンメイデンが力を行使する際、契約者に大きな負担が掛かります。
眠りから覚めた水銀燈は、当然契約者を探すわけですが、柿崎めぐは、契約して力を行使した場合、死に至る可能性が高い。本人はその事をわかった上で、「自らの命の灯火を消してくれ」と、言うのですが、水銀燈は思いとどまる訳です。
その後、薔薇水晶が、「ローザミスティカがあれば、彼女の病気を治す事ができる」とそそのかし、アリスゲームが始まるように仕向けたのですね。
その後、謎の道化師の力を借りて、その場から脱出。
皆で動かなくなった蒼星石を囲み、悲しみにくれている最中に、雛苺に異変が起こります。
まるでぜんまいの切れかかったかのように、カクカクと震える様子を見て、真紅はもう雛苺は永くない、という事を悟り、、冒頭で書いたような事を、ジュンに告げます。
雛苺は倒れて眠りに落ちますが、暫くして何事も無かったかのように起き上がり、ジュンと嬉しそうに戯れます。
さて……これで、いわゆる「死亡フラグ」が立ってしまい、雛苺の機能停止確定。
この後は、もう……ね。
言ってしまえば、典型的手法、ベタといえばベタ。
しかしねえ、私はこういうパターンに一番弱いんですよ……。
ベタといのは、悪い意味で使われがちですが、そのような手法が良いと思われるからこそ、ありきたりになるのです。
くりぃむしちゅーのタリラリラ〜ンという番組で、ベタなドラマでの展開を予想するコーナーがありますが、あの場の盛り上がりっぷりが全てを物語っているかなと。
「この後どうなる?」というクイズを出したら、多くの人が正解するのではないか、そんな内容ですが、正直私にとってはヤバかった。
マジで泣きそうでしたから。
ジュンは、雛苺を連れて、柏葉巴という女性の元へ向かいました。
巴というのは、雛苺の元契約者。真紅に敗れるまでは、彼女の元で生活していましたが、敗北し、真紅の元を離れることができなくなった雛苺は、彼女の元を去ることになります。
なお、巴は、雛苺と契約していた為に、生命の危険にさらされた事があり、その際に、巴を死なせるわけにはいかない雛苺は、契約を解消しています。
「最後は、大好きな人と一緒に」というジュンの配慮。お土産に、普段はあまり食べることのできない、雛苺の大好物の苺大福を大量に持たせ、雛苺は大喜びします。
しかし、その裏で雛苺は理解していた。自分が動かなくなることを。仲間の態度の変化、ジュンの異常な優しさ。彼女が全てを理解するには十分すぎる根拠があったわけです。
久しぶりに雛苺と再会した巴は、かつて共に過ごした日々に思いを馳せます。
やがて、雛苺に再び異変が起こる。
ここからは……もう。台詞抜粋。(若干省略してますんで悪しからず)面倒なので会話文のみ(え)
「雛苺?」
「ほえ?」
「遊ぼうか?」
「うん!じゃあねえ、じゃあね〜え、かくれんぼ!」
「いいわよ。じゃあ、私が鬼やるわよ。い〜ち、に〜い、さ〜ん……」
「えっとぉ、えっとぉ……(隠れる場所を探す)」
「よ〜ん、ご〜お、ろ〜く……」
「あっ……」(ドタッという音と共に倒れる)
「雛苺!?」
「なんか……変…なの…」
(一旦場面が変わり、その後、雛苺が巴に髪を溶かしてもらっている所から)
「やっぱり、巴にしてもらうのが一番気持ち良いの」
「うふふ……そう?」
「…とも…え?」
「何?」
「…あ…り…が…とう……」
「……!!(息を呑む)」
「雛、もうすぐ、とまちゃうん…でしょ?…ジュンや真紅や巴見て、雛、解ったの…。もう…子供じゃないもん…」
「……」
「雛ね…怖くないよ?皆と一緒でとっても楽しかった…から…」
「……(巴の目に涙が溢れ出す)」
「巴と出会って、真紅にあって、ジュンのお家に行って…皆、ず〜っとそばにいてくれた…から…」
「…うっ…」
「とも…え…?泣いて…るの?」
「ううっ……!!ひっく」
「ごめんね……雛の…せいなの…?」
「そんな事ない!!」
「巴……?」
「…お礼を言うのは、私の方…。雛が、いてくれて、楽しかった…。いつも元気に、元気になれた…!!」
(大粒の涙を流しながら)
「桜田君の家に行ってからも、毎日あなたのこと考えてた…。一人で部屋に戻る度に思った…。今頃、どうしているだろう、
って…。私の事、忘れちゃうんじゃないかなって……。でも、あなたはそんなことなくて、ちゃんと覚えていてくれて…。
私、あなたに何もしてあげられなかったのに……」
「そんなこと…ないの。眠ってる雛を、起こして…くれたの…。かばんから、出してくれたの」
「雛苺……!!」
「と…も…え」
「雛苺ぉ…」
(巴の頬に手を当てて)
「泣かない…で…。大丈夫…。雛が居なくなっても、巴のそばには、皆いるから…。独りじゃない…から…」
(思い出が走馬灯のように蘇る)
「…だい…じょうぶ…だ…よ…」
(そのまま巴の胸に崩れ落ちる)
「…雛苺…?ひないちごぉ!!うわーん」
おいらもうわーん(T−T)
この後は、物語が急展開。謎の道化師(ラプラスの魔)と、ローゼンの正体があかされ、いよいよ次回は佳境に入りそうです。
ちょっと論点を変えますが、急だわ、滅茶苦茶だわと、散々批判対象になっていた前回の蒼星石の
死亡シーンに比べると、随分まともになった印象を受けました。
死亡確定→残りの時間を幸せに過ごす→大好きな人の胸の中で…
という展開。マイナス要素でプラス要素をはさむ事で、挟まれたプラス要素が一層引き立つという典型的なものです。
特に、雛苺の場合、元来明るい、天真爛漫な性格をしていますから、一層、途中ジュンと嬉しそうにはしゃぐシーンや、
苺大福を見て大喜びするシーン、さらに回想シーンなどでの彼女の無邪気すぎる笑顔が、強烈な印象を残しています。
また、そんな雛苺だからこそ、息も絶え絶えに、今にも掠れそうな声で、必死に巴に感謝の言葉を述べたり、気遣ったり、
励ましたりしているシーンは感動的。「もう子供じゃない」雛苺が最後に垣間見える。
回想シーンの使い方も良い。
特に、ジュンの家に行く直前、自らのおもちゃ箱を、断固として持っていかなかった雛苺のエピソードは秀逸。
「ジュンはなんか怖いから、自分の大切な物を捨てられてしまうかも知れない。だから、ここに置いていく。そうすれば、また巴に会いに来られるでしょ」
そういっていた雛苺は、今日巴の家まで送ってくれたジュンに対して、そのおもちゃ箱から、大切なクレヨンを取り出し、ジュンに渡しました。
信頼の証、感謝の印…。「良かったね、桜田君」と巴がつぶやきます。
まあ、否定できる箇所もあるっちゃあありますけど、作品としてよくできているなと思いましたね。
私は、こういうパターンは本当に弱いですから。「走馬灯」とか、「思い出の品」とか、ベタなのが最強でしょう。
しかし、これで結局二人が死んだというか、動かなくなり、この後どうなるのやら。また誰か動かなくなるのかなあ。
まあ、ローゼン本人が誰だかわかったわけで、そのローゼンの意志を直に聞くことになりますから
、真紅も考えを改めるのか、それとも…ってところ。
ついでにもう一つ。
木の下で雨宿りをする二人の会話。
「アリスゲームが始まったら、ボクらも戦わなくちゃいけないのかなあ?」
「翠星石は戦わないです」
「…」
「蒼星石のローザミスティカを奪わなきゃならないのなら、翠星石はアリスになんかなれなくて良いですよぉ」
「…キミは強いな」
「あ、当たり前ですぅ!だから、変な事言うんじゃないですぅ!蒼星石は、蒼星石は、翠星石が守ってやるですからぁ!」
…守ってやれなかったね…(T−T)
こういう後付っぽさ満点のエピソード大好き(をい)
エピソードなんてねえ、基本後付ですよ。自分で話書いてみると解りますよ。もう必死にこじつけて、とっかえひっかえ(コラ)
半分の月がのぼる空は翌日に。まあ、あまり書くことないけども。