哀しい現実


今日の夜のことです。私が帰宅すると、弟が目を真っ赤に腫らして涙を流していた。

驚いて事情を尋ねると、祖母と何かあったらしい。




この場合の祖母とは、私の父方の祖母になるのですが、私の自宅の隣に住んでいるのです。

私の父方の祖父は、父が小さい頃に他界してしまったのですが、医者だったんです。

その為、医者の妻であった祖母は随分と裕福で恵まれた生活をしてきた、「お嬢様」だったんですね。

そのせいもあるのでしょうか。私の祖母は極端に自己中心的な性格をしているんですよ。

全く他人の事を考えない。そして、「医者の妻」というアイデンティティを軸に、強烈に凝り固まった高いプライドを持っています。

基本的に悪い人ではないのですが、この事が原因で、近所の人と折り合いが付かない。

周囲の人曰く「近寄りがたい」「あの人は、わたしたちのような一般人と話したくなんてないでしょ」。

祖母は、はるか昔に祖父に先立たれて以来、実の母とくらしてきましたが、その母親も他界した後が、ずっと一人で生活をしてきた。

その「孤独」を、しばしば私達家族に嘆いていました。

しかし、これに関しては、祖母自身が壁を作り出して、人を寄せ付けていないからです。

また、隣に息子家族が住んでいる、という、普通に考えれば極めて恵まれている環境にいる事を考えれば(母方の祖母なんて遠方で一人暮らしですよ)、これで寂しいというのは贅沢な話です。




ともかく、「他人の事を考えることができない」「プライドが高すぎる」という二大要素を押さえて頂いて、話を先に進めます。


この「二大要素」のタチ悪さ(悪気がないから余計)を象徴する事例を二つあげます。



一つ。母方の祖父が亡くなる直前の話。祖父が危篤で、命が危ないと聞いた母は、慌てて祖父の入院している病院に向かおうとしました。出かける前に顔を出せ、と言われていた母は、祖母の家を出掛けに訪ねると、祖母はトイレに入っていて、出るまでまてと良い、母を待たせた挙句、自らの体調の話をくどくどとしだしたのです。
痺れを切らした母は、話を遮って病院に向かったのですが、結果、タッチの差で父親の死を見取ることができなかったのです。

結果論ではありますが、電車一本早ければ間に合っていた。母は深く悲しみ、祖母を恨むことひとしおでしたが、祖母は全く気に介すことはありませんでした。


一つ。近所の薬屋に薬を買いに行った時の話。

粉薬を提示された祖母は、錠剤の方が良いと言いながら、加えてこういったのです。

「錠剤には期限がない(※期限が切れたものを飲んでも平気というのが通説ではある)から、良いのよね〜」

しかし、当然薬剤師としてこの発言を看過できる訳がありませんよね。

薬剤師の方は、期限を守って飲まないと駄目だ、と言うわけですが、そこで祖母はこういったんですね。

「私の夫は医者だ。その妻である以上、薬の事はあなた以上にわかる」

薬のプロに対してこの発言ですよ?これで薬剤師の方はプッツンしてしまい、大喧嘩になってしまいました。



と、問題ばかりだった訳ですが、その渦中に弟が巻き込まれてしまったんです。


私も、実は被害者なんですよね。その事例は割愛しますが、あの時は祖母が泣き出して折れず、私は何も悪いことはしていないはずなのに謝る羽目になったんですが。



祖母は、先程の例にあった通り、ことある毎に私の母親を振り回していたんですね。

全くこちらの事情を考えずに用事を言いつけてくるので、母も困り果てていたのです。

母も専業主婦というわけではなく、一応仕事もしているし、家事も一人でこなしているので、時間的制約は当然ある訳ですが、自分が最優先であたりまえ、という態度なのです。

文句の一つも言いたいところですが、上記のような性格。本人にいえるわけもなく、私や弟が頻繁に愚痴を聞かされていたんです。


そして今日。弟が祖母に会った時に、事件は怒りました。

弟は、思い切って祖母に態度を考慮するように言った様なのです。ただし、忠告という感じではなく、前置きした上で、こういうニュアンス。

「お母さんも忙しい中で来てくれているんだから、たまには、お母さんにありがとうの一言でも言ってあげると、お母さんも喜ぶと思うよ」


これだけ。ところが、この一言で祖母は激怒してしまいました。


このような性格が災いして友達も少なく、孤独を嘆いている事を知っていた弟は、良かれと思って言った訳です。

三者に陰口を叩かれたり、指摘されたりするよりは、血のつながった孫である自分が言ってあげれば、聞いてくれるはず。そう思ったのでしょう。

祖母は、弟に

「それが目上の人に言う言葉か!!!!」

と激怒したのです。その言葉、態度に弟は深い心の傷を負わされたのです。



その後、祖母から電話があった。

泣かせてしまった事を流石に申し訳なく思ったのかと思いきや、全く違った。

涙ながらに伝えた用件が二つ。

「孫にそんな事を言われたらどうしたらよいんだ。情けなくてしょうがない」

「弟に、目上の人に言ってよい言葉と悪い言葉がある事をちゃんと言え」





…どう思いますか?


ここで「目上」「目下」と言われてしまうと、返す言葉が無い。

孫というか、血縁関係にある人間が言っていけないなら、誰なら祖母を問題点を指摘できるんだ。

要するに、「自分が頂点」である以上、自分は常に正しい。そのはずなのに、孫風情に間違いを指摘されるなんて、プライドが許さない、という事。

弟は涙ながらに語った。


「このままじゃ、おばあちゃんは一人で死んでいくことになる。それじゃあかわいそうだから、おばあちゃんの為を思っていったのに…」



想いが届かないってのは、辛く、哀しいことです。



どうしてなのかな。年配の人は、無意味な自尊心でこり固まってしまう。

どんな偉い人だって、完璧なわけは無い。間違いの一つや二つありますよ。

それを認めるだけの心の余裕を何故持てないのか。


間違いを正してくれるのは、愛情ゆえの行動。自分が人の親であるのなら、その事は自分が一番わかるはずなのに。


弟は、祖母を大切に思うからこその発言だったのに。祖母の存在がどうでも良かったらそんな事言う必要は無いのだから。


こうして、身内にまで見放され、独り寂しく死んでいく、そんな人生で良いのか?

心がけ一つの問題なのに。父はマザコンの気があり、祖母に注意なんてしない。

どうしようもないのかなあ。





皮肉にも、私が以前、とある場所の掲示板でした事と同じようになってしまいましたね。

その方も、妙なプライドがあって、私のような青二才に間違いを指摘されたのが耐えられなかったのでしょうね。


一応目上の人ではあったが、皆で築いてきた掲示板を、個人の私物化していたから、思い切って注意をした。言葉は慎重に選んだつもりだったし、悪気が無いのもわかっていたからそのことにも触れた。
私はその人と顔見知りであったし、第三者にマナー違反を指摘されるよりは、私が言ったほうが良いと思ったが、結果は真逆であった訳です。

彼は、自分の書き込みを一斉削除し、もう二度と書き込まないと言って姿を消し、結果的に私が創設時から携わったその掲示板は消滅に至りました。

その時のショックは今も忘れることが出来ません。

そして、後日、私もその氏も知る人物とあう機会がありましたが、その時の事について、こう言われた


「まあ、あの事は若気の至り程度にしか捉えていない」


血管が切れそうになりましたね。私のした事が、まさか若気の至りとは…ね。

この言葉に深く失望し、私はその方々との関係修復を完全に放棄しました。


とある方に、ネットで愚痴をこぼした時、「付き合う人は選ばないといけないし、選ぶ権利もある」といわれた。


一人でも多くの人と仲良くしていたい。友達が少ない、付き合い下手な私はずっとそう思っていましたが、近頃少し考えを改めざるを得なくなってしまいました。



…でも、この場合は血がつながった祖母ですからね。祖母は選べない、というかたった一人ですから…ね。